加藤 忠志のワンポイントレッスン

加藤 忠志氏の略歴
1953年 初めて模型ヨット1号を作る
1958年 実艇・国体総合優勝
1973年9月 R/C第5回大会初参加初優勝
1975年8月 R/C第1回世界大会R・M4位
1975年8月 R/C第1回世界大会10R4位
1980年8月 R/C第2回世界大会R・M4位
1980年8月 R/C第2回世界大会10R予選落
1981年2月 実艇・太平洋横断
R・M 全日本選手権 10回優勝
10R 全日本選手権 4回優勝
1M 全日本選手権 2回優勝
全国大会 53回優勝
F級および36/600クラス3連勝中
ファーストフォームを目指せ!
相手より1/1000良くする
非常に古い話で恐縮ですが、東京オリンピック、ヨット競技のドラゴン・クラスのトップと二位のトータル時間差が、トップの走行時間の1/1000であった事から、当時相手より何でも良いから1/1000良くする。それが勝利への第一歩で有ると言われたものですが、考えてみるとおかしな事である。相手よりどの部分に於いても、少しづつ良くする事は、相手より早く走れる事に成るのだろうか。相手より良くすると言ってもどう良くするかだが、例えば弱風の時、相手より100g軽くしたとしよう。軽く成った分相手より早く走るだろうか。追い風(ランニング)は、ヨットを倒そうとするカは働きませんから、当然軽く成った分、水の抵抗が減りますから早く成りますが、風に向かう(クロース)場合は、ヨットを倒す力が大きく働き、軽くした分前進カが作れない為、早く走りません。又、クロースのコースはフリーのコースより長い為、条件の悪い方が長くなり、平均すると決して早いとは言えない事になります。相手と同じ重量であつても、バラストの重量が100g重いとしたら、これは大きい性能差に成って来ます。水の抵抗は同じですがクロースの時に、ヨットを倒されまいとする力が100g直に働く事に成り、走りは間違い無く早くなります。相手より良くすると言っても、どこをどのように良くするかを考えないと逆に悪くしてしまいます。東京オリンビック当時言われた1/1000相手より良くすると言う事が今考えて見ると、非常に難しい事である事にきずきます。
美しいヨットは.必ず早い
この事も東京オリンビックの時にきずいた事です。フイン・クラスの一隻の美しい写真が舵誌に載っていました。私は本当に美しいと思ったので当然トップの人の写真だと思ったのですが違っていました。上位入賞者では無く、そのレースだけ、ダントツを走った選手の写真でした。その後もヨットの写真は当然数多く見ましたが、美しく写っているヨットは必ず早く走っている時の物である事にきずきました。同じ事が、模型ヨットにも当然言えます。美しいヨットは、必ず早い。皆さんヨットは美しく設計し、美しくチューニングし、美しく走らせれば相手に勝つ事が出来ると言う事です。
模型ヨットの重量変化
RC模型ヨットは、軽量化の道をたどって来ました.全備重量の変化を見ますと、10年前のF級の重量は最大で10kgで、この重量が一番良いとされたものでした。最近のF級は、3kgを切るヨットも、出てきています。どうしてこんなに、軽く成ってきたのでしょうか。日本は、台風や冬型の強風、或いは前線通過時の強風にしても、時期が眼定されたり短時間であったり、夏には太平洋高気圧の為に安定した良い天気で風は弱く、一年を過じて強風はあまり吹かない。そのために軽量化され、たまに吹く風には第ニリグ、第三リグで対応する様に成ってきたからだと思います。重量10kgの時代は、一本のリグで弱風から強風まで走らせる為、バラストは当然重くしないと強風では走れなかったのです。今でも強風の中では、当時のヨットの方が早く走る事は、間違いないでしょう。軽いヨットが小さいリグを使い、強風の中を重いヨットに勝てないにしても、完走する事は出来ますが、重いヨットが軽風の中タイムアウトになり、フイニッシュ出来ない事は多分に出てきます。なれば軽いヨットを選ばざるを得なくなって来たわけです。
セールの材質と制作
以前、模型ヨットのセールは実艇のスビン・クロスそれもナイロン製のクロスを使用していました。それ以外に無かったからですが、雨の日にはセールが湿気で伸びるし、天気の日には縮んでカーブは崩れてしまい、調整に苦労したものでした。現在のセールは、ポリエステル(セール・クロスとしては、テトロン又はダクロン)を使う場合がほとんどで、ボリエステル・フイルムを使用する場含も最近は多い。ポリエステル・フイルムは、製図紙やトレーシング・ペーパーとして最近作られていますし、包装用紙としても薄い物が作られていますので、割と手に入り易く成っています。フイルムを使ってセールを作ると、しわが出来るとそのしわは消えないし破れ易いので取り扱いに神経を使いますが、クロスの場合、その点で使い易く又作り易いので、クロスを使う方が良いかも知れまぜん。どちらの場合も、パネルとパネルの接合は両面接着テープで十分使用に耐え、ミシン掛けの必要はないでしょう。クロスの重さほ0.5ポンド程度で模型ヨットは十分です。
リグは3セット必要
セールはレースに参加する場合、3セット用意する必要があります。艇が軽くなると当然ヒール(傾く事)は起き易く、ヒールが大きくなると当然コントロール出来なくなりますから、小さいリグを使う事になります。小さいリグを作る面積の決め方ですが、第三リグ用として第一リグの半分の面積(ここで言う面積は実面積で、計算上の面積ではない)を作り、第二リグとしてその中間の面積の物を作れぱよいでしょう。小さいリグを使う目安の一つにヨットがバウ沈を始める時が有りますが、クロースでどうしてもコントロール出来ない場含は、バウ沈を初めなくても変える必要が出てきます。第三リグは、よほどの強風でないと使いませんから、全日本の大会に参加する人の中にも持たない人がいますから、省略するのも良いかも知れまぜん。
マスト及びブーム
マストとブームは軽くて強い、カーボン・パイプを使う以外には、考えられない時代に成ってきています‐国際ワン・メータークラスは、ルール上カーボン・パイプは使えませんが、他のクラスでは使えますから、釣り竿やカイトの骨、或いはグライダーのカンザシ、ヘリコプターのテール・パイプ等、使えそうなパイプは探すと色々あるものです.私は30/600クラスやFクラスで8mm、Mクラスで10mm、或いはそれに近い釣り竿も使っています。ブームも同じような物を使うようにしています。
風に合ったリグを使う
リグの使える風の範囲ですが、第一リグで5−6m/sで、この5−6m/sの風とはどんな風かと言うと、海面でしたら自波が出始める頃で、池だと強い小波がたくさん現れるころで、木の枝で中間の太さの物が揺れ動くころです。又、模型ヨットの動きで判断すると、ヒールが大きくなり、タッキングが自由に出来なくなる、或いは追い風でバウ沈を始める時です。この状態だと第二リグに変えますが、第二リグで走っていて、ヨットの状態が前と同じように成れば第三リグに変えますが、こんな状態は一年通じて一二度程度だと思います。
セールのカープ
セールのカーブ、特に深さですが、一般にRC模型ヨットの場合浅過ぎるようです。幅に対する深さの割含は、10%程度が一番良いようで、30cm幅だと深さ3cmで、実艇と同じぐらいです。模型ヨットは、実艇に比べセールの表面を流れる風の速さは、割合にすれぱ非常に早いのですが、揚カを作り出すのはカーブの深さであり、模型ヨットのように小さくても比率は同しであると思います。又、実際浅いセールの場合、風に対しての上り角度は小さく有利に思えるのですが、パワー不足の為、逆に落として走る絡果になっている。それに模型ヨットの場含、遠くを走っているのをコントロールする為に、セールによるシバー碓認が浅いと解りにくいと言うことも考えねばならないでしょう。
メインとジブセールのセッティング
メインとジブセールとの関係は非常に大切で、風の強さによってはメインをやや出してセットする場合も有りますが、ジブを出してセットは絶対に有りません。カーブの深さによりセットは変わりますが、説明は全く同じですから注意してセットしてみて下さい。まずメインセールをクロースホールドでセットします。(シートを一番引いた時)セールに風を受けさせ、その時の風の強さに合わせるのですが、陸上に置いて合わせたのと、実際に水面に浮かべ走らせた場合とでは少し変わりますから陸上では調整目安として下さい。メインセールの第一バテン(一番うえのバテン)とメインブームが平行に成るように、ブームバンクを引いたり緩めたりして調整する。次に、第4バテン(一番下のバテン)と船体中心線が平行に成るように、メインシートを出し入れして調整する。一度調整しても、風の強さが変われば調整状態は変わりますから、調整はやり直さねばなりません。調整の終わったメインセールにジブセールを合わせます。ジブのラフ(セールの前の部分)にシバー(ばたつき)が無いようジブシートで調整し風に合わせます。その時メインセールも見ます。メインセールも同じようにシバーが無ければ良いのですが、メインにシバーが有れば、ジブシートを出します。そしてメインとジブが、同時にシバーするようにジブプシートで何度でも調整します。セールのセッティングはこれで終わりですが、出艇の時はもう一度ヨットを持って、回しながら風に合わせて見ます。ジブとメインとの関係は非常に大切なことで、風の強さが変わると変わりますから、私の場合は、国際ワン・メータークラスの様にルールで使えない場合いを除いて、第三のサーボを搭載して、ヨットが手元を離れた後でも、調整出来るようにしています。このサーボによる調整はジブセールを調整します。メインセールの調整の場合は、全体をシートトリムで調整し、そしてジブトリムでジブセールを調整します。ヨットが手元を離れてから後で、調整したい所も出てきますが、最低でもジブの調整だけは出来るようにしたいものです。
参考図
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